nascom2007-07-15



・2003年8月28日 木曜日
 『約束と脅し』

うそ:占領前、イラク人は、バグダード中の狭い未舗装の道の際に茶色の小さなテントを立てて住んでいた。男と少年は、ラクダ、ロバ、ヤギなどに乗って学校へ行くのだった。学校は、テントの家の大きい版といった感じで、生徒百人につきターバンを巻いた教師一人が算術(羊の群れを数えられるように)と読み方を教える。女性と少女は、家にいて、黒いブルカを被り、パンを焼いて1ダース近いこどもの世話をする。

ほんとう:イラク人は、水道も電気もある家に住んでいる。コンピュータを持っている人もたくさんいるし、何百万人もの人がビデオカセットレコーダーやビデオCDをもつ。イラクには立派な橋、リクレーション・センター、クラブ、レストラン、店、大学、学校などがある。イラク人は、性能のいい車(とくにドイツ製)が大好きだし、ティグリス川にはモーターボートがいっぱいで、人々は魚釣りから水上スキーまで楽しんでいる。

なにを言いたいかというと、人々は、”rebuild”、”reconsruct”(再建、復興)という言葉の小さな接頭語”re”を見ないことにしてるってこと。念のために言っておくと、”re”は、ラテン後起源で、多くの場合”再”とか”新たに”を意味する。

 つまり___もともとそこには何かがあったのだ。何百もの橋がある。アラブ地域で最高の高速道路網がある。南部のバスラから北部のモスルまで、一回もフォックス・ニュースに写っているような狭いほこりっぽい舗装していない道を一回も通らないで、行けるのだ。ひじょうに高度な通信網だって、あった。 Coalition of the Willingは、3回の集中爆撃と3夜を要して、Ma'moun通信塔を破壊し電話を不通にした。

きのう、900億ドルもイラク復興にどのように使うのかについて読んだ。ブレマーは、建物と橋と電気などを元に戻すのにどれだけかかるか、数字を吐き出している。

この話を聞いて。いとこの一人は、バグダードのある有名土木会社で働いている。会社の名前をHとしよう。この会社は、イラク中の橋を設計・建設していてよく知られている。いとこは、構造技術者だが、橋オタクである。聞いてくれる人がありさえすれば、橋梁やトラスや鉄骨構造について何時間でもしゃべっている。

5月が終わろうとする頃、彼は上司から、CPAの誰かがバグダード東南端の新ディアール橋の再建費用の見積もりを要求してきたと、聞いた。いとこは、部下を集め、その橋の破壊状況を調査し、被害はそれほど大規模ではないものの費用がかかると結論を出した。いとこたちは、必要なテストと分析を行い(土壌構造と水深、伸縮継ぎ目と桁といったことがら)、金額を算出して、概算見積として提出した___30万ドルだった。これには、企画設計費用、原材料(イラクでは実に安い)、人件費、下請け費用、旅費などが含まれていた。

こんなふうに仮に考えてみて___いとこは無能。17年以上も橋建設に関わってはこなかった。第一次湾岸戦争で破壊された133の橋のうち20の再建なんてしなかった。彼の概算はまちがっていて、橋再建費用は、その4倍だった。ほんとは、120万ドルかかるのだ。ちょっと想像力を働かせてみて!

1週間後、新ディアール橋の契約は、あるアメリカの会社にいった。よく聞いて!この当の会社は、橋再建費用を約5千万ドル(!!)と見積もったのである。

イラクについて知ってほしいこと。イラクには、13万人の土木技術者がいる。半数以上は、構造工学技術者と建築家である。多くは、イラク以外の国々、ドイツ、日本、アメリカ、イギリスなどで教育を受けた。そうでない者も、イラクにさまざまな橋、ビル、高速道路を作った外国企業で働いた。大多数はひじょうに熟練しており、ひじょうに優秀なものもいる。

でもイラク人を満足させるのは簡単じゃない。ビルはただビルであればいいのではない。芸術的に仕上げられなければならないのだ___彫刻された柱、込み入ったデザインのドーム、なにかユニークなもの、高尚だったり先端的でなくてもいいが、月並みでないもの。バグダード中で見ることができる___上質の板ガラス窓の瀟洒な住宅、ほとんど歴史的建造物たる”バグダード人”のビル、洒落たカフェのとなりの絢爛たるレストラン___ファベルジュのイースターの卵細工とみまがう色彩豊かで凝ったつくりのドームのモスクの数々___すべてイラク人の手になる。

だから、何十億ドルをも要求する外国企業を導入せずに、イラクの土木技術者、電気技師、労働者を利用してもいいではないか。仕事がない多くの人々は、イラク復興にたずさわれることを喜ぶだろう。だが、誰にもドアは開かれていない。

イラク復興は、わたしたちの頭の上に吊るされた”約束と脅し”のようである。イラクの人々は、不信と不審の目で”復興”を見ている。なぜなら、老獪なイラク人は、このようなうさんくさい復興プロジェクトは、国を、唯一アメリカの国債に比肩するような国家債務の罠に陥れることを知っているからだ。少数のすでに巨大な建設業者がますます肥え太る。イラク人労働者は、おこぼれを与えられ、イラクの失業大衆は、控えの位置に待機させられ、外国企業によって華やかなビルが建設されるのをただ見つめるのみである。

この戦争が、石油をめぐるものであると、わたしはしょっちゅう言ってきた。そのとおりだ。しかしまた、この戦争は、戦争が破壊したものを再建することで巨万の金を儲けようとしている巨大企業の話でもある。

『Baghdad Burning』
http://www.geocities.jp/riverbendblog/



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